年末から迷っていたお姉ちゃんが、
意を決して剣道をやめました。
百人一首かるたにはまり、神奈川まで通うようになってから、
剣道とは気持ちの入り方が違うな、と、見ていたのです。
剣道は試合に出たくない。
かるたは試合に出たい。
練習でも、
剣道では押されてなかなか前に出ていけない。
かるたでは、相手が年上でも、大人でも、
ボロ負けしていても、最後まで食いついていく。
いつ、やめるって言い出すかな。
年末、かるた会のクリスマス会と、剣道のクリスマス会が重なった時に、
むむちゃんはかるた会を選んだ。
年初めの剣道の初稽古はスキーで行けなかった。
その次の剣道の練習の水曜日の朝、
今日は保育園の打ち合わせで送ってあげられないかもしれないから、
お休みする?と聞くと、ひとりで行けるから大丈夫だよ、と言って学校に向かった。
が、夕方、泣きながら電話がかかってきて、「頭がいたい~(涙)」
あったかくして横になって休んでてね、すぐ帰るから。
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あぁ、そろそろいいかな。
私の方から、切り出したのでした。
もしも剣道を続けるのが大変だったら、やめるのもありだよ。
・・・・うん・・・・。
どうしようかな。
かるたがんばりたいしな。
でもな、あと少しで一本とれるようになりそうだしな。。。
急ぐことないけど、少し考えてみてね。
出した結論は、剣道はやめる。
かるたをもっとがんばる。
やめることを前提にしながら稽古を続けるのはつらいので、
翌週の土曜日の夜、剣道の稽古の終わる時間にあわせて、
「やめます」を言いにいくことにした。
ふたりで、緊張するね、緊張するよ、と言い合いながら。
ママ、お話してくれるんだよね?
ママもお話はするけど、むむちゃんからも、先生に言わなくちゃいけないよ。
やめますっていうことと、ありがとうございました、っていうこと。
むむちゃんは、辞める理由をもしも質問されたら
「かるたをがんばりたいから」と説明するつもりでいた。
みなの稽古が終わるのを待って、体育館から出てきた先生の前で、
何度も隣の私を見上げた。
先生がゆっくり身をかがめてくれた。
「やめます」と一言、絞り出すように小さな声で言ったあとは、
困ったように俯いたまま。
先生は、
そうか。忙しくなった?
と、促してくれたけれど、言葉が出ない。
競技かるたをはじめたこと、東神奈川まで通っていることを私から話す。
そうか、かるたもパシッととるんだよな。
剣道でパーンと打ち込むのに似てるな。
練習してきたことが生かせるかな。
かるたも声出すんだろう?もっと声が出るようになるといいな。
がんばって。
先生は私の話を聞きながら、むむちゃんに向けて話し続けてくれました。
むむちゃんは、先生のかけてくれる言葉をうつむいたまま聞き続けていた。
ありがとうございました。
深々と頭を下げると、むむちゃんもならって頭を下げた。
お母さん方に私が話して、挨拶している間、むむちゃんは周囲を気にしていました。
剣道に誘ってくれたお友だちに、
やめることを直接言う勇気が出ないまま、当日を迎えてしまったから。
おとなの輪が途切れた時、
「残念だけど、かるたがんばりなよ。」
と、お友だちが笑って声をかけてくれた。
ようやくむむちゃんの表情がほぐれた。
あらかじめお友だちのお母さんにお話しておいて、
土曜日にうかがいますので、と伝えておいて良かった。
意を汲んでくださって前日の夜にお話してくださったそう。
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私は、やめるのが苦手だ。
(たぶん)やめると切り出すことができず、結果長く続いたことが多い。
やめたい気持ちのまま、うまく伝えられずに曖昧に疎遠になっていったり、
バタバタと姿を消したりしてごまかしてしまった経験もある。
それらはとっても、後味がとても悪い。
…………
言えて良かったね。
むむちゃんも、ママも、がんばったね。
かるたがんばろうね。
○○ちゃん、怒ってなくて良かった。
先生よりお母さんたちの方が残念って言ってたね。
あったかくなったら、むむも走ろう。運動不足になったら、かるたで勝てないから。
饒舌になったむむちゃんと、てを繋いで帰った。
やめるときは、「やめます」と、伝えることですっきりする方法を、
一緒に経験できて良かった。
この先、何かをやめようとした時に、一緒に居てあげられる機会は
きっと、どんどん少なくなるばかりだもの。
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そして、親にできるのは後のフォローだけ。
翌日は剣道の大会運営で会場校になっていた。
予定通りの係の仕事をさせていただいた。
せめてもの恩返し。
半日あまり気持ちよく仕事をさせてくださった親のみなさんに感謝。
終わると張りつめていた糸が切れたよう。
放心したままに週末が終わっていきました。
…………
この一年半あまり、毎週水曜日にはむむちゃんはひとりで夕飯を食べ、
慌てて帰ってきた私とぷうちゃんもいそいで夕飯を食べ、
体育館まで送った。
送ったあと急いで家に帰って、お夕飯の続きを食べ、
急いで片付けて、ぷうちゃんをお風呂に入れて、
お迎えの用意をさせて、再び自転車でむむちゃんを迎えに行った。
いつもなら寝るはずの時間に家に帰りついて、そこからお風呂に入り宿題をする。
まだ8歳だったんだ、その生活をはじめた時は。
一年半もよくがんばったよ、むむちゃん。
夜の慌ただしい時間を一緒にやり抜けたぷうちゃんもえらい。
水曜は、朝からぷうちゃんの遠足のお弁当と、
むむちゃんのひとりで食べられるお夕飯を用意し、
ぷうちゃんと私がささっと食べられる夕飯の下ごしらえをして出かける生活を続けてきた
私もよくがんばった。
もうむむちゃんにひとりで夕飯を食べることを望まなくていい。
そのことにただただホッとする。
もうぷうちゃんを急き立ててご飯を食べお風呂に入り、寝る時間にお迎えに外に出なくていい。
そのことにただただホッとする。
みんなよくがんばった。
毎週のこの経験そのものが、私たちを逞しくしたね。
そして、できれば、むむちゃんにはこれからの小学生の間は、
そこまでがんばらなくていい子どもの時間を、過ごして欲しいな、と、願ってしまったりするのです。
ちっちゃい135ml.のビールで十分に酔いが回る日曜の夜。