むむちゃんの散歩道

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上橋菜穂子 守り人シリーズ 夜な夜な完読

覚悟を決めて、先週『精霊の守り人』を手に取り、
心を鬼にして通勤読書、夜読書のみ手にとることと決め、
この週末に守り人シリーズを完読。
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読み応えありました。
夜読書のみと決めたのが災いし、毎晩寝不足の金曜、土曜。
日曜はかろうじて日付の変わる前に読み終え、嘆息。

一巻目を読んだときには、中年女性(バルサ)が主役のファンタジーって珍しいな。
と思ったのですが、シリーズが進むに連れて、話が深まり、チャグムが成長し、
バルサの物語からチャグムの物語に移り変わっていった。

と、共に、為政者になってゆくとは。が、メインテーマに。

今の政治家たちに読ませたい、とつくづく思い、
これを読み心に強く刻まれた子どもたちの中から、この魂を胸に政治家になる者が
あらわれたらいいなぁ、と願う。

上橋菜穂子さんいはく、トールキンの『指輪物語』のような物語を自ら書きたい、
と高校生のころに思ったその思いをあたためて、このシリーズは生まれた。

どちらかというと、野生のエルザを彷彿とするのは自然の中を旅する描写が多いからだろうか。

シリーズが進むにつれ、国同士の戦いになる。
戦いを避け、人死を最小限にとどめたいチャグムの思いがいかにして
国交を結び、統治へと導くか、を主題としながらも、
人が死にすぎる描写には少し疲れた。
読み飛ばせる不良読者なので、不快な描写は斜めに読み飛ばすのだけれど、
それにしても。

『指輪物語』も、いまあらためて読むと、戦いと死の場面が生々しくかつ多い。
これを映画化し、可視化してしまえば、あのような残虐な映画にもなろう、とあらためて気づく。
映画製作のせいだけでもなく、原作ゆえのあの映画だったのか。

ゲルマン民族系の神話、北欧系の神話の流れを受けた物語は、
自ずと「戦争」、殺し、殺される場面が増える。
それが歴史の真実だったからなのだろう。

上橋菜穂子さんが自然はありのままにそこにあり、
それを人々が自らの思いに引き寄せて解釈する、
それを書きたかった、と述べている、それを、もう少し色濃く描いて欲しかった。

人と人の闘いなど我が意にかすることもなく、
大地も、水も、大気も、木々も、草花も、生命の営みを続ける。
その根は、太陽系の宇宙ともつながり、地底の奥底ともつながる。

星読みたちが、星を読み治世に力を持つ、という設定を、
もっともっとぎゅっと引き寄せて、どのように星を読み、
どのように地上の変化を促すのか、
そこを徹底して書くような物語を、
文化人類学者の上橋さんだったら書けるに違いない。

いま、読みたい。
そんな物語を。

地が揺れ、波が押し寄せる、雪や氷が溶け、潮流の生態系が変わる、
これらの変化をどのように読み解くか、
ファンタジーで描くとするならば。

そんな物語を読みたい。

完読して満足して、今週を迎えた日、
勤務校の守り人シリーズがごっそりと借りられた。

いま、私がホットに感じているこの感慨?を、
この学校の中の生徒の誰かが感じているのかもしれない。
たとえ、批判的な読みであったとしても、何らかの揺さぶりを身に受けているだろう。
授業中に読むのを耐えているのだろうか。

あれこれ想像するだけで、喜びがこみあげる。
学校という場で司書の仕事が出来る喜びである。
by shiho_kato | 2014-06-10 22:00 | 読書ノート | Comments(0)