むむちゃんの散歩道

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中脇初枝『世界の果てのこどもたち』

またまたこれは骨太なお話しでした。
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中国残留孤児について、概要はもちろん知っているけれど、

その「あるひとり」がどんな暮らしをし、
どんな戦禍に巻き込まれ、
どんなふうに実の家族と別れ、
どんなふうに育ての親と過ごし、
そして、日本へ到るのか。

この小説を読んで、はじめて知ることができました。


在日朝鮮人について、概要はもちろんしっているけれど、

その「あるひとり」がどんな子ども時代を過ごし、
どんなふうに祖国を離れて日本に渡り
どんなふうにこの国で生活をはじめたのか。

この小説を読んで、はじめて知ることができました。


そして、空襲で身寄りを失くし戦災孤児となった茉莉がおとなになってからの言葉。
「わたしね、死にたくないの。わたしが死んだら、わたしの記憶もみんな消えちゃうでしょ。そうしたらきっとなにもかも、なかったことになる。そうしたらきっと、愚かな人間は、同じことをくりかえす」「わかっているのよ。わたしも同じ、愚かな人間だから。」
辛い過去、辛い思い出を記した言葉に、触れたくないという気持ちが私にはある。
辛い思いに引きずられていくのを忌避したい気持ちがある。
だけれど、この小説を読みながら幼い時から成長を見守った茉莉の言葉は、
聞き捨てにできない。読み捨てることができない。

殺し殺されることで、ものごとが好転することは、何一つ無い。
刃を立て、刃から身を守ろうとしながら爪を立てることで、
得られるものな何もない、失うものばかり。

自ら失うゴールに向かっていく戦争法案に対しても、安倍政権に対しても、
毎日毎日を丁寧に生きる私たちの未来を、汚さんとすることへ憎々しさが溢れてくる。



この小説が、本屋大賞の候補作の一冊として選ばれたのを知り、
本屋さんの目利き、本屋大賞の質、どちらも信頼したくなった。
by shiho_kato | 2016-02-10 21:00 | 読書ノート | Comments(0)