むむちゃんの散歩道

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西川美和『永い言い訳』

ダメ男小説か。。。
はじめから、げんなりしていた。

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なのに。

ダメ男が遅ればせながら、
失ってはじめて、大切な人を大切な時間を過ごすことに気づいていていく
ベタなストーリー展開なのに、不覚にも涙が出そうになる場面がいくつか。


おそらくは、愚かな彼が、自分を愚かであると認め、
ひとつひとつ自らの実感として丁寧につかんでいっていたからだ。
半歩ずつ、半歩ずつののっそりとした歩みを
ストーリーをスピードで押してしまわない辛抱強さでもって、描いていたからだろう。



失ったものの大きさに気づく頃には
もう二度と取り戻すことができない。

気づいた瞬間に襲われる、居てもたってもいられぬような気持ちは、
宙に浮くしかない。
そのやるせなさと折り合いをつけられるように、
そのうつろな悲しみを抱き続けながら、
生きていくしかない。

気づきは、残酷だ。



立ち止まって雲が流れていくのをじっと眺めているような気持ちになった。


好きなフレーズ。

「彼らは子供というより、『小さいひと』なんだと思うようになりました。完全な人格を持ち、ぼくらの人生に大きな影響を及ぼします。」
by shiho_kato | 2016-02-18 20:00 | 読書ノート