映画化された時には心惹かれなかったのだけれど、
ちょっと前に読んだ中澤日菜子の『PTAグランパ』が面白かったので、読んでみた。
彩には上野樹里を重ね、伊藤さんにはリリーフランキーを重ねながら読んでしまうのだけれど、そのまますっと読めた。
その配役はあっていたのではないかしら。
そして、なんだか良かった。
冴えない設定の、冴えない物語で、なかなか誰もハッピーにはならないのに。
小さなイラ立ちと折り合いをつけられなくってもがいたり、日々を流されて幾日も経っていってしまったり、そういう不可抗力の推進力に運ばれながら進むお話だった。
伊藤さんのキャラが、私の好みにあっている。
目の前のことに逆らわずに淡々と吸収していくあたりが。
吸収できる突出した広い器がある、わけではなくって、微調整しながら隙間に流し込んでいくことができる。
満員電車でも、無駄に抵抗せずに自分のスペースをおのずと獲得できるような。
(満員電車は、抵抗すればするほど物理的にも、また気持ちの上でも侵略されがちだ)
こんな風に吸収できる人が、私にとって一緒にいると安心な種類の人なんだ。
と、気づいた。
このところ、読むのと書くのとの比重やタイミングのバランスが崩れていて、
大切な言葉をいくつも逃している。不意にガツンと胸の奥に入ってくる言葉もあるのに。
どの作品の、どの言葉か、どんな言葉か、すぐに忘れてしまうのは残念だけれど、
きっと、今の私には、ガツンとくるものであり、
未来のどこかの私には、必要の無い言葉であるに違いない。
読んだそのときに、心が大きく揺さぶられた、あたたかくなった、やさしい気持ちになった、その事実だけあれば、いい。
ということに、しておこう。