文藝春秋の社長さんの「文庫は図書館で扱わないでください」
の話をじかに聞くことができた。
文芸書は月に20冊、新刊を出すことになっている(単行本)。
黒字になるのは、20冊中、3~5冊程度だそうだ。
各5000部発刊し、そのうち3分の1出ればトントン、1500部ちょっとか。
赤字になる分を埋めるのが、文庫の売り上げ。
その文庫の売り上げがどんどん落ちていて、赤字を埋められなくなっている。
そこで「文庫は図書館で貸さないで」というお話になったそうです。
図書館で貸さなければ、購入数が伸びる数値的な根拠は無いそうだ。
でも「文庫は買って読む」という読書マインドを行き渡らせることをお願いしたいんです、と繰り返していた。
経営上の問題は門外漢なので、いうべきことが無いのですが、その新刊本20冊を半分に減らしたらどうか?
黒字になる3~5冊をのみ選び出して、発刊するという目利きはできないのかな?
挿話のなかで、芥川賞受賞作家の受賞後の作品は、図書館が資料保全の目的で必ず買うので、公立図書館の数1,500部は自動的に買われるため、単行本としては黒字展開となるそうだ。
本を読む裾野が広がらなければ、本が買われることは無いので、とにかくも本が身近で親しまれ、読むことが日常になる文化が醸成されることが理想だろう。
それは出版社にとっても、図書館にとっても、本屋さんにとっても、等しく願うところに違いない。
*・・*・・*・・*・・*・・*
その話を聞いたのをきっかけに、勤務先の図書館で文庫がどのくらい利用されているか調べてみた。
貸出総数のうちの文庫の割合である。
2012年度 35%
2013年度 39%
2014年度 40%
2015年度 34%
2016年度 38%
2017年度 42%(4月~10/20現在)
増減はあれど、どの年も3~4割を占めている。
文芸書にしぼった貸出数のうち、文庫の割合で見ると、
2012年度 64%
2013年度 61%
2014年度 65%
2015年度 64%
2016年度 62%
2017年度 65%
文芸書を借りる場合、6割以上は文庫本で借りていることになる。
所蔵する文芸書全体に占める文庫本の割合は40%なので、単純に数字の上で見ると、
単行本よりも文庫本を選んで借りる割合が高いと言えるだろう。
個人的には、学校図書館において子どもたちが読むことを習慣化するために、文庫の手近さは欠かせない。
教科書やら部活やらで彼らの荷物は重量級だ。そこに入る余地のある大きさの文庫であるからこそ借りられる。
手狭な学校図書館で、より多くの本を並べようと思えばそのコンパクトさは魅力であるし、
予算僅少な学校図書館で、より多くの本を購入しようと思えばその安さに助けられている。
勤務校の図書委員会も応募し、当選し50冊を寄贈していただいた。
その50冊は、この4年間で122回借りられている。
寄贈書を選ぶにあたって、生徒たちに文春文庫リクエストを呼びかけ、
寄贈いただいてからは、文春文庫コーナーを設けた。
このときに寄贈いただいた池井戸潤はもちろん、乾くるみや三浦しをん、横山秀夫etcは、その後発刊された小説も引きつづき購入している作家たちだ。
共存、だよなー。
その作戦を、書店も出版社も図書館も共に立てる場所が必要なんだと思う。