むむちゃんの散歩道

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図書館の自由と学校図書館と「読書指導」

簡単に、私の意見を書いておこう。

・「読書指導」において、学校図書館の貸出履歴は、生徒・教員で共有されることがあることを、貸出を始める前から生徒にあらかじめ知らせてあれば共有はOKである。あるいは、履歴を生徒に戻し見られたくないものは消してもらった上でならOKである。

・しかし、貸出履歴以外については、触れるべきではない。たとえば「自殺や殺人についての本に関心を示している生徒がいる」などということを、学校司書が教員に知らせるべきではない。
・学校図書館で借りている本が、生徒の読書のすべてだととらえたら大間違いである。それとともに、学校図書館外での読書については(たとえば購入したり、たとえば公立図書館の本を借りて読んでいるもの)、生徒の自己申告で把握すべきである。


私は小学生のときに、個人課題(私だけに課せられた課題)で、読書ノートを教員に提出させられていた。
そこに記すのは、読んだものすべてではない。また、その日読んだものではなくてページを埋めるために過去に読んだものも記したりした。
その教員が、なんの意図でもって私ひとりにその課題を課していたのかわからないのだが、少なくとも、彼の勧めた本を読もうとは思わなかった。なぜなら、読書の「量」で言えば、彼よりも私の方がはるかに多いであろうことがわかっていたから。実際、彼の勧めてくれた本は、当時の私にはとても退屈で、消化読書的なものだった。

私が高校生のときに、現代文の教員に受験に向けて個人指導をしていただいていた時期がある。
彼の勧める文章は、がんばって読んだ。テキストの一部分だけではなく、その本一冊を読もうと努力した。受験期のその読書は、時間の使い方としては負荷になっていたかもしれない。
それでも、理解できるようになりたい、わかるようになりたいと思って読んだ。彼が圧倒的に私よりもずっと多くの本を読んでおり、読んだ本も読んでいない本についても、深く理解していたからだ。


私は、思う。
「読書指導」をしたいのであれば、生徒ひとりひとりの読書の傾向を把握することよりも先に、多くの本を読んでいることが必要だ。
多くの本を読み、多くの本にふれた上で、自分の読書の姿勢と傾向とを生徒に示すことだ。
そこまでした上で「君たちの読書傾向を知り、読書指導を行いたい」と宣言することだ。



ちなみに、学校図書館にある本など、世にある本のほんの一部でしかない。

学校図書館法が定める学校図書館の資料は「学校教育に必要な資料」である。
「学校教育に必要な資料」でしかない、と言ってもいい。


学校司書として、この学校で好まれ使われる必要であろう本を頭と心と情報を駆使して選書し、生徒に沿った蔵書構築をしたいと努力しているけれど、どんなにがんばっても「選書」のフィルターを通したものしか置けないのだ。

私自身、毎日図書館に身を置きながら、この図書館の本と、ほぼ同じかそれを上回るくらいの本を公立図書館で借りて読んでいる。
この学校図書館には合わない、そぐわないが、私が読みたい本はあるのだ。
選書権を持つ私とてそうなのだから、生徒はいっそうそうだろう。



学校の中にある図書館で、互いに顔と名前を把握されている図書館で、自身の読む本が、すべて「読書の自由」を守られ、プライバシーを守られていると、無邪気に信じられるような子どもでは、私は無かった。


そして私の読書活動において「ごく一部」でしかない学校図書館の利用履歴を教員に把握されたからといって、読書の自由を侵害されたと憤るほど、私の読書の世界は狭くなかった。


そういう経験を踏まえて、学校図書館への期待が低い私は、(あるいは、リクエストには限りなく応えたいと思いながら、それだけの期待を託されるだけの信頼は得られ難いと葛藤しながら仕事をしている身として)「学校図書館」か「図書館の自由」かの二項対立はあまり意味が無いと思っている。


学校図書館における読書の記録は、生徒自身があらかじめ教員に知られることを承知していれば生徒がコントロールできるものだ。
そのコントロールを尊重すべきだと思っている。


そういうわけで、冒頭の結論に至る。



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学校図書館法
(定義)第二条  この法律において「学校図書館」とは、小学校(盲学校、聾学校及び養護学校の小学部を含む。)、中学校(中等教育学校の前期課程並びに盲学校、聾学校及び養護学校の中学部を含む。)及び高等学校(中等教育学校の後期課程並びに盲学校、聾学校及び養護学校の高等部を含む。)(以下「学校」という。)において、図書、視覚聴覚教育の資料その他学校教育に必要な資料(以下「図書館資料」という。)を収集し、整理し、及び保存し、これを児童又は生徒及び教員の利用に供することによつて、学校の教育課程の展開に寄与するとともに、児童又は生徒の健全な教養を育成することを目的として設けられる学校の設備をいう。


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図書館の自由に関する宣言
第3 図書館は利用者の秘密を守る
 読者が何を読むかはその人のプライバシーに属することであり、図書館は、利用者の読書事実を外部に漏らさない。ただし、憲法第35条にもとづく令状を確認した場合は例外とする。
 図書館は、読書記録以外の図書館の利用事実に関しても、利用者のプライバシーを侵さない
 利用者の読書事実、利用事実は、図書館が業務上知り得た秘密であって、図書館活動に従事するすべての人びとは、この秘密を守らなければならない。




by shiho_kato | 2018-07-03 18:45 | 読書ノート