またしても、有川浩にしてやられた。
児童養護施設の子どもから手紙を受け取って、
自分たちの状況を小説に書いてくれという依頼に応えて書かれた小説。
よく、書けています。
このジャンルで、これだけきっぱり誉めるのは、内心悔しくもある。
が、白はた。完敗だ。
『隣る人』と『明日ママ』への評価、批判もデフォルメした形でちょろりと入る。
『隣る人』への子ども自身の発言による手厳しい批判には、大大大共感。
『明日ママ』へは同感ではないけれど、こういう影響を与える作品だったよね、には共感できる。
黒川翔子の『誕生日を知らない女の子』よりもずっとよく書けている。
あれはルポであるにも関わらず、だ。
ルポルタージュをフィクションである小説が越えて核心を描き出せる可能性を目の当たりにした気分。
『誕生日…』は有川が最終ページな示した参考文献にも入ってこない。それはそういうことなのだろう。
児童養護施設を子どもの眼差しから描くとこうなる。
それをがっつり書ききれるこの人の筆の力に、悔しいけれど感服。
佐川光晴の「ぼくのおばさん」シリーズも視線は良かったなぁ、と思ったけれど、
シリアスに、ぐっとこらした眼差しでは、『明日の子供たち』にかなわない。
10月に子どもについてお話できる場がある。
自信をもってお薦めできる一冊と出会えたことに感謝。
有川浩、自衛隊はもういいから、子どもたちの眼差し、
もうひとがんばり、書いてよ、ぜひ。