むむちゃんの散歩道

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辻村深月『ハケンアニメ』

有川浩、いいもの書くなぁ、としみじみ思って読み終えたら、
辻村深月でした。

辻村深月、ごめんよ〜。

いかにも有川浩っぽいテーマだし、
取材ガッツリしました!の内容だし、
背高体育会系女子とか眼鏡おたく女子とかイケメン性格悪男子とかのキャラ設定も有川浩っぽいし、
落として一気にあげてハッピーに転がりこむ展開も、
何よりおしゃべりにスピーディーな文体が似ているんだもの。
辻村深月『ハケンアニメ』_d0134102_01132663.jpg

辻村深月と思って読後感をかみしめると、
王子の「神」フレーズ、
”ひとりの充足”に込められた辻村の想いが響く。

孤独死とか孤立とか「孤族」への危機感への反動で
ホットになった「リア充」とか、つながるとか、絆とか。

それが満ち足りた幸せであるための条件のようになってくると、とたんに苦しくなる。

つるむ相手がいなきゃいけないような、
ひととつるめるコミュ力が無いといけないような。

辻村があちこちで発言している、
物語に逃げ込めて救われた。
私もそう。

本くらい、ひとりで読ませてくれ~。
本を読んでいる間くらい、ひとりで満ち足りている私を認めてくれ~。

「本を読んでいる私をどうか放っておいてください、そっとしておいてください。」
私の小学生、中学生、高校生時代の切なる願いだった。
いま大人になっても、本を読んでいるあいだだけは、
社会的責任も役割への責任や現在進行していて気にかけなくてはならない
諸々のことを忘れてていいことにしてと願う。

そういう共感で胸がいっぱいになる一冊でした。


付け加えて、図書館を人の輪の中心へ、地域のコミュニティ作りの拠点へとか、
のトレンド(?)、機能の観点からは有益だと思います。

が、図書館空間の中はひとりを全面的に肯定する場であることは揺るがせにしないで欲しい。

ひとが生々しく現実を生き続けるのに必要な休息処でありシェルターなので、つながり熱で脅かさないでください、よろしく。



by shiho_kato | 2015-02-10 22:21 | 読書ノート