むむちゃんの散歩道

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小川洋子『琥珀のまたたき』

心配性の母親に、
壁の内側から出ないように育てられた3人の子どもたちの物語。

母親は毎日仕事へ出かけてゆく。
3人の子どもたちは、ただ教えを守っているだけで、
壁の外へ出てゆくことは容易かった。

にも関わらず、壁を越えず、ひっそりとその内側に身を置き続けた。
そこを世界のすべてと思い込もうとしながら。


だれにも気づかれることなく、
この世の中から身を隠すなんて物語の中の世界だから可能なんだ。


それをちょっぴり羨ましく思いながら、
読んでいた矢先に、
二年間行方不明だった朝霞市の中学生がみつかった。
監禁されていた場所から自ら逃げ出し、助けを求めた、と。

監禁していた人物は大学に通っていたそうだ。
外出の留守の時間があっても逃げられず、そこに居て、
だれに気づかれることなく、2年の時が過ぎてゆく。

そんなことが現実にもあるんだ。



身を潜めるのを羨むのは、それが自分の意思でなされる場合ばかり。
そして、手の届かぬ夢物語であればこそ。

実際に誰にも気づかれずにひっそりと生きる、
そんなとてつもない孤独には耐えられないだろうと思えるほどに、
いま、陽の光のなかで生きていることに気づいた。
by shiho_kato | 2016-03-30 16:22 | 読書ノート | Comments(0)