むむちゃんの散歩道

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交通遅延と小林昌平『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』

6月の後半になって交通機関の遅延が増えている。

祝日の無いひと月に、私は疲れ気味だが、
疲れているのは私だけではないのだろう。

先日はとうとう山手線外回り(時計回り)が完全にストップしてしまい、
振替輸送を利用して、勤務先に向かった。

地下鉄網を駆使して、どのルートをたどるか検討しながら、
乗換のいちばん少ないコースを選んだ。

そうしたところ、改札出口も、乗換先の改札入り口も、おびただしい人人人。
入場規制と、乗車規制がかかっており、ぎゅうぎゅうの混雑。

乗換三回のコースを選んだ方が賢明だったか・・・。

ぐったりした気持ちを周囲から閉じて立て直すために本を取り出す。
最近は、小説と小説以外の二冊持ち。とても物語に入り込める気がしなくて、
小説以外の本を開くことにする。(ぎゅうぎゅうの中で開くわけだが)

今日入れていたのは『その悩み、哲学者がすでに答えを出しています』
仕事/自意識・劣等感/人間関係/恋愛・結婚/死・病気の章に分かれ、

それぞれにたとえば
緊張してしまう/自分を他人と比べて落ち込んでしまう/ダイエットが続かない/人の目が気になる/毎日が楽しくない/人生がつらい・・・
などのお悩みがあげられ、お悩みひとつに一人の哲学者の「答え」を示す。

いちばん最初のお悩みは
Q:「将来、食べて行けるか不安」
A:アリストテレス「快楽は本来、「活動」にほかならず、それ自身目的なのである」『二コマコス倫理学』
著者意訳:「将来の目的は計画をいったん忘れ、今この瞬間のやりたいこと、やるべきことに熱中せよ」「「今、自分にとって楽しく充実しているという状態」がそのまま「すでになしとげた成果」になる」「自分が向いていると心から感じられる作業に全力で打ち込み、充実した手ごたえを感じながら毎日を生きている人を、世界が放っておくことはないでしょう」

つまるところ「やるだけやったら、次がある」のだそうです。
何これ面白い!!


Q:「やりたいことはあるが、行動に移す勇気がない」
A:デカルト「困難は分割せよ」『方法序説』
著者意訳:「本気で取り組める小さなゴールに刻んでいったら、夢は夢でなくなります」

おぉ、これも私がしばし実感する「夢は叶う」そのものだ。デカルトとは気が合うな。


Q:「人の目が気になる」
A:ミシェル・フーコー「懸命になって『ゲイ』にならなければならない」『同性愛と生存の美学』
著者意訳:「世間体や他人の視線を気にしてしまう自分を統御しながら、勇気をもって自分のありようを自由に発揮させて生きていく努力」
参考:森博嗣「非合理な常識よりも、非常識な合理を採る。それが自由への道である」『自由をつくる 自由を生きる』

アリストテレスやデカルト的に生きてると、おのずとフーコーの言う「自分を自由に発揮させる」ことにたどり着く。もはや人の目など気にしている暇は無い。


Q:「嫌いな上司が居る、上司とうまくいっていない」
A:スピノザ「嘲笑せず、嘆かず、呪わず、ただ理解する」『エチカ』

嫌いを苦手と置き換え、上司をヒトと置き換え「苦手なヒトが居る、そのヒトとうまくいっていない」とすれば、使える場面がぐんと広がる。


Q:「重い病気にかかっている」
A:ウィトゲンシュタイン「世界の事実を変えることはできないが、世界を幸福に生きようと意志することはできる」『論理哲学論考』

これは、このまますーっと入ってくる。



質問とは呼応しないけれど、この二つはぐっと来た。

アドラーの「自分の課題と他者の課題を分離せよ」『人生の意味の心理学』
ヘーゲルの「敵対した「私」と「あなた」がわかりあい、「われわれ」として一段上に上がることが大切である」『精神現象学』




いちばん大好きと思ったのは、こちら。
Q:「夜、孤独を感じる」
A:ショーペンハウアー「早くから孤独になじみ、孤独を愛するところまできた人は、金鉱を手に入れたようなもの」『幸福について』

孤独は金鉱ですって。なんでもかんでも絆とかつながりとかネットワークなんて。友だちは100人もいらないし、お昼ご飯はひとりで食べていいし、移動はひとりでしたいし、勉強会だってひとりで参加したいし、ひとりが好きで何が悪い。


面白くて夢中になるうちに、改札を通り、地下鉄に乗り、目的の駅に到着。

通勤は苦痛だ。されど
「読めよ、さらば救われん」


哲学者たちが身近になったひとときでした。



※本著は面白い。でもどこが哲学者本人の言葉の引用で、どこが著者の解釈による意訳なのか、その言葉の典拠はなんなのか、書かれ方があいまいなのが残念。

by shiho_kato | 2018-06-26 18:54 | 読書ノート | Comments(0)