むむちゃんの散歩道

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幸福論*見田宗介『現代社会はどこに向かうか』

年に一回くらい、「わ!やられたっ!!」と思う新書と出会う。

昨年は

今年はこれ。

「高度経済成長」という用語を、現代社会を表すキーワードとして
社会の授業で習ってきたわけだけれど、
それが古い社会のとらえ方であること、
成長が古い価値であることを体感しながら、大学卒業後の20年を過ごしてきた。

暉峻逸子さんの『豊かさとは何か』(岩波新書、1989年)とか
廣井良典さんの『定常型社会ー「新しい」豊かさの構想』(岩波新書、2001年)とか、
節目節目に出会って、新たな今必要な価値はこっちだよね、と自分なりの把握をしてきた。

橘木俊詔さんの『格差社会ー何が問題なのか』(岩波新書、2006年)に始まり、貧困の問題を考えたりとかしながら、
震災の大きな揺さぶりもあり、社会は価値を完全に転換させたと思っていた。

このところでは、平田オリザさんの『下り坂をそろそろ下る』(講談社現代新書、2016年)とか、『転換期を生きる君たちへ』(晶文社、2016年)あたりで、もう「成長」は頭打ちで舵を切ったんだ、と机上では理解しつつ、
ちまたの政治とか経済とかが、ちっとも古い価値感から抜け出ることなく、
過労死を増やしたり、非正規雇用を相も変わらず多くしたり、長時間労働を助長したり、
社会とはちぐはぐなものだ、と、苛立ちともあきらめともつかない気持ちを抱えながら生きている。

過労死でバシバシ人が死に、長時間労働でドンドン人が病み、非正規雇用で雇用がガタガタになり、
子どもは減り、労働人口も減り、やっとやっと、「経済の成長」を第一義としない、
豊かな文化や芸術や、日々の生活の充実が、この世に生まれ生き続ける幸せの礎であることを、
共有できる社会づくりが始まったようだ。


子どもたちが大人になるまでに、間に合いますように、整いますように、
と切に願っている。


私の中で、「誰がなんと言おうとも、「生きることの価値」はこれである」
ときっぱり定まっており、ピクリとも揺らがぬほど、頑固に根が張っている。

なので、今更、何を読んでも、ふむふむそうかそうか、としか読めないので、
あえてそこに時間を割きたくは無いな、と思うのだけれど、
何を思ったのか、見田宗介の『現代社会はどこに向かうか』を、うっかり読んでしまった。


もう、びっくりだ。
アメリカやヨーロッパの青年たちは、すでにそれら価値の転換を終え、
「共存」「脱物質主義」を、自らの価値に変えているではないか。
持ちすぎるほど持つ愚を排除し、身の丈に応じた充実をはかる尺度を持って生きているではないか。
データとして、明確に表れるほどに、それらの価値は社会化されているではないか。

印象でも、操作でもなく、空気でも、感度でもなく、
データとして、それを示した見田宗介さんに感謝したい。


父は見田宗介が大好きだ。
実家の書架で見慣れた名の見田さんの本を、これまでだって、読んできているはずなのに、
さしてピンと来ていなかった。

今回、それらのデータを示してくれた事も含めて、
揺さぶられように、見田さんいいじゃん!!!と、はじめて思った。

いいじゃんいいじゃん、とってもいいじゃん、と、勢いよく読んでいって
最後の最後に、野本三吉さん(加藤彰彦さん)の名前が出てきて、思わずのけぞった。
なんだ、知り合いなんですか。なんだ、同類なんですか。

私の生きている世界は狭い。
これぞ、という人は、さして多くは無いってことなんだろう。
その少なさを残念にも思えば、何を考えている人か知っている人たちが
私の見える社会のフレームを形作っていることに安心も覚える。


ここしばらく不勉強だった空白を埋めるべく、見田さんの本を読んでみよう。


そして、今、すごく言いたい。

停滞しているかのような社会の雰囲気に、内面磨き、自己充実のための方法を探す人が多いのか、
あっちにもこっちにも、「幸福論」が満ちている。

でもね、幸福とは何かを論じたり、考えたりするよりも、充実を「体感する感度」を育てた方がいい。

書かれた幸福を追求しようなどとしない方がいい。
自らの内面をうんとまげて書かれた「幸福」に近づけようとコントロールなどしない方がいい。

今日の食事が美味しい、今日の眠りが心地よい、じわっと楽しい気持ちがわいてくる。
それをキャッチして、日々の充実として受け取れる感度を高める方がよほどいい。

その一点で、「幸福論」を説く哲学書など読まぬほうがいい。
司書の、本を読まぬ勧め。

そして、もし「幸福」とは何かを知りたくて読むのならば、見田宗介の『現代社会はどこに向かうか』を読めばいい。
「自分の幸福」を知る方法を教えてくれる。

by shiho_kato | 2018-09-20 18:54 | 読書ノート | Comments(0)